
明治期横浜の窯業を先導した加藤湖三郎または日光商店の色絵磁板を出品致します。本作に於いて特筆すべきは、以下の諸点です。
1、形状 通常の陶磁板は四角形ですが、本作は額装を前提にして楕円形で製作されています。稀に真円形のものがありますが、楕円形の作品は初見です。
2、額装 一見するとシンプルな木製額に見えますが、額の表面・裏面・横面の全面に絹布が貼り付けてあります。裏面の脱落防止固定具も竹で作られています。
3、 絵付 陶磁器の画工ではなく、日本画家によって絵付けされています。松邑(松村)の印に一渓の銘がありますから、松村一渓と読めます。幕末の京都四条派の始祖が呉春こと松村月渓ですから、四条派の流れを汲む日本画家と考えられます。写真でお分かりの通り、主題の日本女性の日本髪の毛髪一本一本が丁寧に描かれています。また、背景の簾の竹籤一本一本の輪郭線まで丁寧に描きながら、全体には四条派らしい洒脱さを漂わせています。
4、 素地 サクタ製(サクは金偏に歯)の銘があります。当時の優れた陶板と言えば、加藤善治や川本半助が有名ですが、これにはサクタの銘があります。
額の寸法は、縦が42cm、横が34cmです。
ワレ、カケ、ヒビ、スレなどの瑕疵はありません。陶板そのものは未使用と言って良い素晴らしい保存状態です。
ご参考までに加藤湖三郎の略歴を記します。
安政4年に尾張東春郡水野村で生まれる。後に加藤小三郎と名前を変えた。
明治18年の頃、横浜の住吉町に日光商店を開店。後に南仲通に移転し、明治24年、弁天通に移った。
横浜市内指折りの陶磁器商人となった加藤湖三郎に関して、『横浜成功名誉鑑』(明治43年)は次のように評している。「古人言うあり『勤強は幸福の母』は加藤湖三郎に於いて眞味を知るべき候」
主な授賞
・第5回内国勧業博覧会 2等賞
・各種磁器宮内省御買上 彩色菊画偏額
・セントルイス万国博覧会 銅賞
・京浜聯合(れんごう)第一回陶画共進会 協賛銅賞牌
・ベルギー・リエージュ万国博覧会 銀賞
・日英博覧会銅賞
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