話力運動の歩み
話力運動の歩み
文和書房 発行
昭和57年初版
249ページ
約20x13.5x2.5cm
函入
※絶版
話力研究所(現:一般社団法人話力総合研究所)の話力運動十周年を記念して編まれた本。
話し方、聴き方、コミュニケーション、プレゼンテーションなど単なる話の技術を超えた、
人間の総合力としての話力理論を開発。
本書の「日本における話力運動の周辺とその歴史」は、点在している資料を集め、
裏づけをとり、系統だててまとめたもの。
日本には類書がなく、話力運動からの視点ではあるがこの方面を研究するための一助となるよう体系づけられた労作、大変貴重な資料本。
【話力運動の中で生かされて】より
永崎一則
人間の問題を、人間らしい方法で解決する、真の力を磨き合う人の輪を拡げたい、という「話力運動」への願望を内外に立言してから、はやいもので十年になりました。
十年の歳月は、そのことだけに打ち込んだ日々を思うと、つかの間に過ぎ去ったようでもあり、立ちどまり戸惑う苦闘の跡をたどると、たいへん長いようでもありました。
凡人の一人である私が貧しい頭脳と、肉体、そして、話力運動にかける情熱だけを支えに、高遠なて理想を追い求めることの無謀さと、ひとりとして同じでない人問を対象にする運動のむずかしさを痛感しながらここまで歩みつづけてまいりましたのは、多くの皆様の温いご声援と、同志の使命感にあふれた固い結束でありました。
設立当時、「資金の援助をしたい」とおっしゃって下さった方々、「いまは動けないが、いつの日にかメンバーのひとりに加えてほしい」とはげまして下さった同行の士は、実に数十人にも達しました。
だが、設立当時、一つの秩序の変化に示された多様な人間の動静が、行先きの多難さを感じさせ、ブレーキになったこともありました。それにしても、当時ご援助を賜りました方々や企業とのおつきあいは、話力研究所設立以前からしますと、実に二十年以上にもわたっています。
いま、十年の歩みの中で生起したさまざまなことを振り返り、ある種の感慨が脳裏を去来します。
苦しみに耐えし日もあり
喜びに胸ふくらませし日もありこの十年
草創期においては苦しい時もありましたが、十年のほとんどは、楽しい希望に満ちたものでした。
忘れ得ぬ善意な方々との邂逅に、しみじみと人の情けを思い、人とともに生きるこの世は何とすばらしいものであるかと、神の配剤に驚歎するのみでございます。そのすべてが喜びであり、感謝でありました。
ところで、ひとたび目を世界に転じますと、この地球のどこかで悲惨な戦禍があとをたちません。特に最近、戦雲がこの地上を覆いつつある予感を膚で感じます。人間が人間らしい方法で、人間の問題を解決する、話力による平和な世界の実現はいつのことか、思えばその道はあまりにも遠く、夢のようなはかない運動のようでもあります。しかし非力でも、歴史の証言としてだれかがこれを叫ばなければならない、こんな悲願をこめてこれからの迎動に微力をつくしたいと存じます。
日頃は何かとご配慮を賜りながら、今日また、公私ともご多忙の皆様に玉稿を頂戴いたし、本書に一段と精彩を加えていただきましたことは感謝のほかありません。ありがとうございました。
十年、遅々とした歩みではありましたが、ささやかな迎動を休まず、急がずつづけさせていただきましたことに心からお礼を中し上げ、報告をかねて本書を作成いたしました。 (話力研究所所長)
【目次】
話力運動の中で生かされて 永崎一則
I
立派な企業人である前に立派な社会人であれ 江頭年男 日本電気株式会社 常務取締役
着々寸進蝸牛の歩みやがては洋々青海万里大鵬の飛ぶを 江木武彦 社団法人言論科学振興協会 理事長
創設者の一人として 金井良子
秘書教育と話力 川口晃玉 学校法人川口学園 理事長
おめでとう 清水省三
話力研究所創立十周年を記念して 杉原正 警察大学校 校長
永崎話力学との出会い 宋在五
国際人の資格としての話力 多賀義昭 デュポンファーイースト日本支社 管理本部長
女子社員研修と話力 武居尚 麒麟麦酒株式会社 取締役人事部長
相互理解と信頼 丹羽直久 武蔵野赤十字病院 院長
話力研究所のご発展を 間簔三郎
青年永崎一則 村永薫 知覧町郷土誌編纂委員
話は心の訴え 森田義和
熱あり、力あり、温かみあり 山川雅美
聞き上手は信頼され愛される 山本思外里
Ⅱ
日本における話力運動の周辺とその歴史 永崎一則
話力研究所この十年 大畠常靖
話力の三要素をたかめるには 笹山登生
独話(スピーチ)における「接続のことば」の実態と指導 高橋俊三
Ⅲ
幸福を売る男に 天前輝正
講演活動からみた十年 永田功
接遇訓練を通して 佐々木邦江
社会教育の中で 近田登志子
話力研究所と社会教育のかかわり 伊藤美和子
登校拒否と話力 原良枝
流れのある研修を 松田憲二氏に聞く
話力講座に参加して 受講生の声 インタビュアー 日下和子 渡辺儀
おたより拝見 塚田文子
研鑚の場、研究会 山縣暁子
研究のかなめ、冬と夏の合宿向井麗子
座談会 話力総合会館を
Ⅳ
「話力研究所」設立趣意
話力の仲間
話力に生きる
話力講座案内
ビデオ教育シリーズ
出講先一覧
話力研究所所員著書一覧
話力研究所所員・研修生紹介
あとがき