鶴田一郎（1954年熊本県天草市生まれ）は、中学時代に田名網敬一、宇野亜喜良、横尾忠則らに憧れイラストレーターを志し、高校卒業後に多摩美術大学でグラフィックデザインを学びました。スーパーリアリズム全盛期にエアブラシを独学で習得し、1987年にはアートディレクター亀倉雄策に見いだされノエビア広告に起用されました。彼の「鶴田式美人画」はポスター、雑誌、テレビなど多くのメディアで展開され注目を集めました。後に俵屋宗達や酒井抱一ら琳派の影響を取り入れ、アールヌーボーやアールデコの要素を融合した独自のスタイルを確立し、現在は京都で制作を続けています。

鶴田一郎「想い深く」水彩 約6号 2001年作
鶴田一郎が2001年に制作した水彩作品「想い深く」は、そのタイトル通り、深い内省と感情の余韻を感じさせる一枚です。画面には、静かに目を閉じた横顔の女性が描かれ、彼女の整った顔立ちと麗しい表情が、見る者の心に穏やかな感動をもたらします。薄く透けるような青の色調は、画面全体に清らかな空気感を与え、流れる長髪や肩のラインとともに、静謐でありながらもどこか官能的な印象を漂わせています。

作家・鶴田一郎は1954年熊本県生まれ。多摩美術大学でグラフィックデザインを学び、1970年代から80年代にかけて広告や書籍装丁などで注目を集めました。1987年、ノエビア化粧品の広告に起用されたことで、美人画の第一人者として広く認知され、以降もその洗練された美の世界を追求し続けています。本作は、鶴田がパリにて原画展を開催した節目の年に生まれた作品であり、国内外で評価の高まった時期を象徴する重要作のひとつです。「想い深く」は、鶴田一郎の代名詞である“静謐な美”の結晶とも言える作品であり、現代の琳派を思わせる構成美と精神性を兼ね備えた、まさに時代を超える美の象徴です。