大型図録本 世界陶磁全集 18 高麗
写真集 解説 原色カラー図版291点 単色図版150点 文様259図 やきもの 陶芸 茶道具 古陶磁 古美術
高麗青磁 象嵌青磁 鉄絵青磁 絞胎 高麗白磁 辰砂彩 鉄彩 鉄釉 高麗青瓷
重要文化財 唐物 作品集 写真集 写真解説 論文 論考
座右宝刊行会 長谷川楽爾 責任編集
小学館
1978年初版第1刷
約31x22.5x4cm
291ページ
カラー図版291点 モノクロ図版150点 文様259図
函入 カバー付き上製本
※絶版
※月報付き 「伊豆沼古窯と鳥文の陶片 藤沼邦彦 / 土器(かわらけ)三題 その三 奥田直栄 」本巻執筆者紹介掲載
文化庁協賛 新資料を総集 高麗陶磁研究の決定版、大型写真集・大型図録本。
古来、「翡色」をもって名高い高麗青磁、世界の陶磁に類例を見ない繊細な象嵌の技法等々。高麗の陶磁は、中国宋代の陶磁にも比すべき高い完成度を有している。
日本国内・世界各国の著名な美術館・博物館コレクションより最高峰の作品を厳選して紹介。
●高麗窯址出土の重要破片資料を含む原色カラー291図
●単色図版150点余文様259図
●日本、韓国の最高執筆陣による最新資料に基く充実した研究論文を掲載
青磁・象嵌青磁・鉄絵青磁・絞胎・白磁・辰砂彩・鉄彩・鉄釉、
陶磁における象嵌技法という世界に冠たる至芸を生んだ、高麗四百年余の窯芸の諸相を韓国学界の協力による豊富な新資料で解明。
当代の最高権威による論文・解説を満載、その幅広い魅力を総合的・体系的に展開した陶磁研究と鑑賞の基本書。
水注、香炉、瓶、鉢、水滴、碗、輪花皿、浄瓶、梅瓶、水指、陶片ほか多数収録。
【全集全体の紹介文】
陶磁の歴史は芸術の面からも、生活のレベルでも人類史と不可分のものです。本全集は世界の陶磁を網羅し、地域別かつ時代別に編集しました。
各巻、カラーおよびモノクロ図版に、専門家による解説、文献目録などをそえた構成。
美術館・博物館所蔵のものに、近年発掘された新中国の古陶磁などを加え、また諸窯の遺品も収録するなど、世界陶磁の決定版全集です。
一つ一つの陶磁に「人類の文化史」を語らせた
今後四半世紀は、実現不可能というべき決定版
世界的に最新資料を集大成した最大規模の決定全集
一万余点の写真資料を駆使、原色図版を豊富に収録
最新発掘の陶片なども、美しいカラーで数多く収録
日本陶磁では特に茶陶を重視、名品を各巻に収めた
各巻冒頭に陶磁文化史を載せ、体系的理解を深めた
【目次】
本文
高麗の文化と磁器
高麗陶磁の編年
鉄絵青磁・鉄彩手・鉄釉
高麗陶磁の窯址と出土品
椀・鉢による高麗陶磁編年
記銘・詩文のある高麗陶磁
高麗陶磁の文様
高麗陶磁に関する古文献資料
原色図版・解説
本文挿入原色図版
青磁・象嵌青磁・白磁
鉄絵青磁・鉄彩手・鉄釉
窯址出土の高麗陶磁破片
高麗陶磁の文様
図版解説
主要文献目録
年表
英文本文目次
英文図版目録
《撮影・資料提供》
安宅コレクション
小倉コレクション保存会
東京国立博物館
東洋文庫
根津美術館
大和文華館
講談社
仁川市立博物館
韓国国立中央博物館
韓国民族美術研究所
澗松美術館
湖最美術館
アート光村
坂本万七写真研究所
便利堂
小西晴美
韓哲弘
東垣美術館
東国大学校博物館
梨花女子大学校博物館
サンフランシスコ・アジア美術館(エイブリー・ブランデージ・コレクション)
フリーア美術館(ワシントンD.C.)
ボストン美術館
大英博物館(ロンドン)
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(ロンドン)
Asian Art Museum of San Francisco, The Avery Brundage Collection
Freer Gallery of Art, Washington D. C.
Museum of Fine Arts, Boston
The British Museum, London
Victoria and Albert Museum, London
【執筆者紹介】(月報に掲載)
李基白(イ・キベック)氏 韓国古代史を専攻。
『韓国史新論』『民族と歴史』『新羅政治社会史研究』『高麗兵制史研究』などの著書があり、前二書は日本語訳がある。西江大学校史学科教授。
崔淳雨(チェ・スンウ)氏 韓国美術史を専攻。 絵画や陶磁に関する論文が多数ある。本巻責任編集者。韓国国立中央博物館館長。
長谷部楽爾氏 東洋陶磁史を専攻。中国、朝鮮、 東南アジア陶磁に関する論考が多い。本巻責任編集者。東京国立博物館東洋課長。
郷良謨(チュン・ヤンモ)氏 高麗、李朝陶磁、 絵画史等に幅広く活躍中。新安引揚文物調査にも従事。韓国国立中央博物館主席学芸研究官。
林永周(イム・ヨンジュ)氏 韓国美術史、就中、文様史を専攻。韓国国立中央博物館勤務。 吉田宏志氏 東洋陶磁史、李朝絵画史等を鋭意研究中。大和文華館学芸課長。
【各作品解説一部紹介】
青磁鳳凰牡丹唐草文瓶(十二世紀初) Freer Gallery of Art, Washington.
Celadon vase in Mei-p'ing style, decorated with carved design of birds among peony scroll. The early 12th century.
高28.5cm 幅18.8cm
龍者とやや似たどっしりとした姿の顔だが、口部の造りに違いがある。牡丹唐草の間に、長い尾羽をもった華やかな気分の島、おそらくは風風を、大きく浮彫風にあらわしてある。その頭部が鸚鵡に似ているのは、高麗青磁独特の表現で、越州窯の鸚鵡文の名ごりなのであろう。勿論この瓶の文様には、越州窯青磁の文様のかっちりとした気分はない。どことなく柔らかく、どことなく写生風の気分のある牡丹唐草であり、鳳凰である。焼上りも良好で、最盛期の傑作であることはまちがいない。1914年、ニューヨークの日本協会で行なわれた東洋陶磁展に、フリア・コレクションから出陳されており、R.L.ホブソンが解説を加えている。米国にある高麗青磁の中でも、早くから名高いものなのである。
(長谷部楽爾)
青磁九龍浄瓶(十二世紀前半)
大和文華館
Celadon Kundika, decorated with nine dragon heads. The design of dragon bodies is carved on the body. The first half of the 12th ceritury. Yamato Bunkakan Museum, Nara.
高33.5cm 胴径12.5cm
注口部と上端の口を龍首とし、頸部に設けられた鍔の上方と頸の付根とにそれぞれ四個、三個の龍首を飾った、 類例のない浄瓶である。しかも、鍔より上の部分は先端の龍首の頸としてあらわされ、以下の器表はそれぞれの龍首に応ずる龍身を浅い浮彫であらわすことによっておおわれている。龍首は目に小さく黒い瞳をあらわし、牙や角、舌や歯などの細部も細かく作り出してある。龍身も片切彫と毛彫を併用し、いたって精緻である。総体に黄みの少ない、透明な感じの青磁釉がかかっているが、 胴の下半には白濁した部分がある。龍首にみられる釉だまりは、いわゆる翡色青磁特有の玉のような深い調子で、 端正な器形、鋭い龍首の表現とともに、この瓶が最盛期の作品であることを示している。全羅南道康津郡の古墓で出土したものといわれ、承盤と思われる深鉢といっしょに市場に出たというが、承盤は失われてしまった。見事な龍文の青磁片が康津郡沙堂里の窯址から出土しているので、沙堂里古窯で焼かれたものかもしれない。数ある高麗青磁の浄瓶の中でも、もっとも秀抜な作調を示す名品である。
青磁筍形水注(十二世紀前半)
Celadon ewer with cover in the shape of a bamboo shoot, decorated with carved details of a bamboo shoot. Six spur marks on the base. The first half of the 12th century.
高23.7cm 口径3.7cm 底径8.5cm
全体を筍の形に作り、注口と把手も竹をかたどってある。筍の荷は浮彫風にあらわしてあり、その全体に浅い櫛目で葉脈を彫りつけているが、すべて少しの乱れもなく仕上げられている。驚くべき技巧というほかない。把手の頂に小枝と葉で銀を作り出してあり、蓋にも竹の葉の形をした躍があって相応じている。青磁釉はなめらかに融け、明るく澄んだ最高の発色をみせている。底の畳付のあたりだけ軸をふき取ってあり、硅砂を含んだ土の目跡が六箇所にみられる。日本にある高麗青磁の中でもとくに傑出した作例として名高く、最盛期の作風をよく示している。
青磁象嵌童子宝相華唐草文水注 (十二世紀中葉)
安宅コレクション
Celadon ewer, decorated with design of boys among grape-vines in reverse inlay, and on the spout and handle with vines painted in black and white. Six spur marks on the base. The mid 12th century. Ataka Collection, Osaka.
高18.8cm 口径3.6cm 底径9.5cm
張りのある曲面をもった、やや縦長のまるい胴は、瓜の一種を思わせる。注口は付根が太く、がっしりと胴に取り付けてあり、先は細く曲がっている。把手は平たく、上端が巻き込んでおり、下端には補強と装飾を兼ねて蓮葉が貼りつけてある。大きな花をつけ、一部に童子をあしらった唐花唐草文を胴の全面に浮彫風に彫り出し、 文様の地にあたる部分に白土を象眠し、輪郭と細部に黒象嵌を加え、全体に淡い透明性青磁釉でなめらかにおおってある。把手・蓮葉・注口には、釉下に白土と鉄絵具で彩絵が施してあるのが珍しい。底は、ごく低い高台が作り出してあり、畳付の種がふき取ってあって、そこに六個の目跡がみられる。総体よくまとまったおっとりした姿で、いわゆる逆象嵌の手法も破綻がなく、日本にある象嵌青磁の遺例の中でも、早くからとくに有名な名品である。
青磁辰砂彩蓮介文瓢形水注(十三世紀前半) 伝京畿道江華都崔沆墓出土湖最美術館
Gourd-shaped ewer and cover in the shape of lotus bud. Decorated around the neck with applied ornaments of boys holding lotus buds, and overlapping lotus petals in underglaze copper red. Celadon. Probably excavated at the tomb of Choi Hang, Kanghwa-gun, Kyonggi-do. The first half of the 13th century. Hoam Art Museum, Yongin-gun, Kyonggi-do.
通高32.7cm 口径4.0cm 底径11.2cm
辰砂彩、白地花と各種装飾のある瓢形瓶で、高麗陶磁の中ではもっとも華麗な作品である。安定感があり、 堅実さが感じられる。高麗の一般的な製形水注に比べ、華麗でとくに洗練されている。蓮峰形の上胴と下厨には、 蓮弁が陽刻され、各弁には花眠が陰刻されている。頭部には、両面に一つずつ、下から生えたようにみえる荷葉と童子が抱える蓮峰がある。把手も特異で、上胴と連結する部分は、忍冬文のような蓮峰をはさんだ唐草葉であり、下部は二段になっている。注口も、上部を、把手上部と同じ唐草集で胴部と連結させて、意匠と堅実な効果を同時に収めている。注口の下部と胴部が接合する部分の周囲は花の形で、注口は下部を中心に荷葉を巻くようにして作り、蓮茎がこれを支えている形である。
胴部の蓮介周縁、唐草葉間の蓮峰頸部の蓮葉上面、童子の両足、童子が抱く蓮峰、注口下部の荷葉中心部などは辰砂で試彩し、すべての蓮峰と荷葉、唐草葉に花・葉眠を陰刻している。重蓮弁中、小弁の中央と下闘の上部周縁、把手の両端、注口の底部周囲、注口の荷葉中心を支えた蓮茎と唐草葉の端などは、白堆花点を打ち、童子の両眼と頭頂部、鮭の眼は鉄砂点を打っている。釉薬は氷裂がないが、光沢があって、気泡が静かに沈澱したやや半失透性で、淡緑色を帯びた明るい青磁釉である。高台ははっきりと造出し、底の袖をふき取って耐火土と砂をまるめて八箇所を支え、爆造した。この水注は京畿道江華島で発見されたもので、高麗武臣執権の基礎を築いた崔忠献の孫世流の墓誌とともに出土したと伝えられる。祖流は高麗高宗四十四年(丁巳,1257) 残であるから、 この水注の下限が1257年となり、ほぼ十三世紀前半ごろの青磁と辰砂の状態を知る上の貴重な編年資料といえる。
ほか