
自宅保管の品です。大変美品ですが古いものですので、表紙など若干の経年劣化はございます。ご理解頂ける方にご入札をお願い申し上げます。
愛する人を失った悲しい記憶を胸奥に秘めて、奥能登の板前の後妻として生きる、成熟した女の情念を描く表題作ほか3編を収める。
人は精がのうなると、死にとうなるもんじゃけ―祖母が、そして次に前夫が何故か突然、生への執着を捨てて闇の国へと去っていった悲しい記憶を胸奥に秘めたゆみ子。奥能登の板前の後妻として平穏な日々を過す成熟した女の情念の妖しさと、幸せと不幸せの狭間を生きてゆかねばならぬ人間の危うさとを描いた表題作のほか3編を収録。芥川賞受賞作「螢川」の著者会心の作品集。
レビューより
やっぱり表題作になっている「幻の光」がよくできているなと思うけど、計四篇いずれの作品も読後、心地良い余韻に浸れた。ハッピーエンドで終わる、というわけでもないのだけれど、なぜか前を向いて生きていこうという気持ちが湧き起こってくる。恐らくこれは宮本輝の作品に共通する特徴なんだろう。昭和五十年代の作品なのでちょっと古くなってきたかなとは思うけれども、50代のおじさんにとっては懐かしくもあり少し哀しくもあった。
小説のなかで人々が生きている
通俗性は低いですが、文学としての描写や心情の表現に感嘆します。
オチや意味を求めて読む小説ではなく、市井の人に焦点を当てて人生をのぞき見して
何かを感じ取り体験する話です。
自分だけが主役ではなく、周りの人間も自分のストーリーを持って生きていると描かれています。
悩んで辛い思いをし、考えているのは自分だけではなく、身近に生きる人それぞれに、口や態度にも出さない苦悩や葛藤がある。
他人にも愛する人にも吐き出せない心の澱が積もりに積もったふとした瞬間、
誰に告げることも誰を思うでもなくただ死のうと思う。そういった死が描かれていた。
何の前触れもなく突然会社にこなくなった誰かのように、あっけなく死んでしまいます。
ドラマチックな死や大袈裟な自殺などは描かれていません、身近にある不意な死です。
悲しみと寂寥感は周囲に生きる人々に残り続けます。一つ一つの話しは短いですが、心に残る力強い映像がとても多い作品でした。