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鍋島焼 阪井茂治作の葡萄唐草文 鶴首花入です。産地の窯元で技術を習得し、独立後も全工程をご本人ひとりで手掛けられることで名高い作家さんです。個展を中心とした活躍で 独自の世界を確立され 今も常に高い評価を維持しておられます。
この花入は エレガントな美しさに溢れた出来だと思います。極薄く青味が加わった美しい白の素地の上に これも淡い色調の色絵が展開されて、それだけでも甘く幻想的な世界が広がり魅力的です。胴部分には葡萄唐草の丸文が四つ…ほんの少しの変化を伴って配され “無限ループ”の感。天上に誘われる…とでも言うか 秘密の花園を覗き込んでいるかの様な不思議な感覚を覚えます。
通常は 一般的な“鍋島風”の…いわゆる “和柄” の多い作家さんですが、この場合は 柄が“唐草” である点も大きな要素だと考えます。“唐草” は “シルロード” 伝来の意匠として有名で、更に元を辿ればギリシャ・ローマのモチーフですので、その辺りにこの品のどこか異国風の雰囲気の根源が感得され興味深いです。落ち着いた “和風の風” と言うより、どこか透明な “エーゲ海の風” と言いたい風情です。
“葡萄”は 絵柄の中でも作家さんの好まれるお得意の題材らしく、極近年の個展のサムネ画像も“葡萄”の作品でした。同じく木なりでも そちらは収穫の少し前らしく硬く凛とした房生り。一方 こちらは完熟し果汁を含んだ丸く大きな実生りで、両者のニュアンスの描きわけも見事だと感じます。グッと近づきアップにしたこの葡萄の実からは完熟した甘酸っぱい香りまでが届くようで、作家さんの表現の練達ぶりが伝わります。
全体として ちょっと厚手で堅牢な雰囲気です。鍋島焼の青磁や白磁の作品と同様で、これは産地ごとの貴重な持ち味だと言えましょう。現物がそう厚い訳ではないのですが、そう感じさせる威厳のある作風で、“鍋島焼” の魅力が満載と言う事なのだと思います。
共箱に杉の木色が出て 少し茶色味を帯びています。近年の作の場合 箱書の署名横に “沙羅ノ辻窯”と書き添えられる事が多い様ですが それもありません。製作から相応の時間の経過が感じられます。

美品です。本体 大変に綺麗で良い状態だと思います。内部を目視できませんが、花入としてはおそらく未使用なのでは…と感じます。印籠蓋の高級な共箱と黄布が付属します。共箱に木色が出ていますがこれも良い状態です。本体 共箱 黄布と揃った条件の良いセットだと思います。

概寸 口径 2.7cm×胴径 9.2cm×高台 6.6cm×h 24.2cm

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陶磁器については、本人作と窯・工房作とがありますが判断が難しく、箱書やシオリに明記がある場合以外は、タイトル欄には便宜的に本人名を記しております。入札の際は、記述の他に、箱書、作風、サイン等を元に大様のご判断をお願いいたします。飽くまで個人所有の品のお取引で、個人同士のお付き合いですので、専門店並の品質や知識や対応をお求めの方は入札をお控えください。